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肺がん診療ガイドラインのトリセツ【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第5回

第5回:肺がん診療ガイドラインのトリセツパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト藤田医科大学病院 呼吸器内科・アレルギー科 大矢 由子 氏参考1)日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2023(オンライン版)関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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進行肺がん、初診から治療までの待機期間が治療効果に影響/日本呼吸器学会

 肺がん治療において、初診から治療開始までの時間が長くなるほど悪液質の発症率は増加し、さらに悪液質があると治療効果が低下すると示唆された。 悪液質は進行がんの50〜80%に合併し、がん死亡の20〜30%を占める予後不良な病態であるため、早期からの介入が重要である。肺がんでは、治療が進化する一方、病期診断、病理学的診断に加え、遺伝子変異の有無やPD-L1の発現率などの専門的検査が必要となり、初診から確定診断・治療開始までに一定の期間が必要となる。 この初診から治療開始までの待機期間に全身状態が悪化し、抗がん剤治療の導入自体ができなくなる例がある。また、治療導入できても悪液質に陥った状態で化学療法を開始した患者では、初回治療の効果が不良となりやすい。関西医科大学の勝島 詩恵氏は、初診から治療開始間に起きる身体機能変化、がん悪液質の発生について、第64回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 主な結果は以下のとおり。・初診から治療開始までの期間中央値は、手術症例37.0日、化学療法症例42.5日であった。・初診時と治療開始時の身体機能の変化はBMI(p=0.001)、握力(p=0.009)、MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)精神ストレススコア(p=0.001)と有意に相関していた。・初診から治療開始までの期間中央値を基準に早期群と遅延群で悪液質発症率を評価すると、早期群では初診時61%、治療開始時61%と変化がなかった。一方、遅延群では初診時37%、治療開始時87%と悪液質の発生が増加していた。・病期別で悪液質発症率を評価すると、StageI~IIIAでは初診時と治療開始時で変化はなかった一方、StageIIIB/CとIVでは治療開始時に悪液質発症が増えた。とくにStageIVでは初診時から治療開始時のあいだに新規に悪液質発症が有意に増加していた(8例→16例、p=0.008)。・悪液質発症の有無と治療効果を評価すると、病勢制御率(DCR)は悪液質あり群66.7%、なし群100%、初回治療完遂率は悪液質あり群58.3%、悪液質なし群では100%であった。 進行期の肺がん患者においては、初診から確定診断・治療までの待機時間は長く1ヵ月を超える。この期間に悪液質を発症した結果、初回治療の機会さえ失ってしまう症例がある。たとえ治療導入ができても、この待期期間中に身体機能が落ち、悪液質の状態となっていると初回化学療法の効果が劣ることが示唆された。 勝島氏は「よりよい治療選択のための精査にかかる時間は、初回治療導入のチャンスを失うリスク、身体機能低下のリスク、治療効果を下げるリスクを抱える。悪液質に対する真の『早期』からの介入とは、化学療法開始時ではなく、さらに前の初診時なのかもしれない。今後、悪液質に対する適切な介入時期についても検討していきたい」と述べた。

3.

がん免疫療法中の抗菌薬投与が予後に影響?

 ペムブロリズマブによる術前治療中のHER2陰性高リスク早期乳がん患者において、抗菌薬の投与と高い残存腫瘍量(RCB)との関連が示唆された。これまで、免疫療法中の抗菌薬への曝露が、さまざまな種類のがんにおいて臨床転帰に悪影響を与えることが報告されている。米国・ミネソタ大学のAmit A. Kulkarni氏らは、ISPY-2試験でペムブロリズマブが投与された4群について、抗菌薬への曝露がRCBおよび病理学的完全奏効(pCR)へ与える影響について評価した2次解析の結果を、NPJ Breast Cancer誌2024年3月26日号に報告した。 ISPY-2試験では、ペムブロリズマブの4サイクル投与と同時にパクリタキセルを12週間投与し、その後ドキソルビシンとシクロホスファミドを2~3週間ごとに4サイクル投与した。免疫療法(IO)と同時に少なくとも1回の抗菌薬の全身投与を受けた患者が抗菌薬曝露群に、それ以外のすべての患者が対照群に割り付けられた。 RCBインデックスとpCR率は、t検定とカイ二乗検定、線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを使用してそれぞれ両群間で比較された。 主な結果は以下のとおり。・66例が解析に含まれ、うち18例(27%)が抗菌薬投与を受けていた。・免疫療法中の抗菌薬の投与は、より高い平均RCBスコア(1.80±1.43 vs.1.08±1.41)および低いpCR率(27.8% vs.52.1%)と関連していた。・抗菌薬の投与とRCBスコアについて、多変量線形回帰分析においても有意な関連がみられた(RCBインデックス係数:0.86、95%信頼区間:0.20~1.53、p=0.01)。 著者らは、より大規模なコホートでの検証が必要としている。

4.

NSCLCへの周術期ニボルマブ上乗せ、術前療法が未完了でも有効か(CheckMate 77T)/ELCC2024

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験(CheckMate 77T試験)において、周術期にニボルマブを用いるレジメンが良好な結果を示したことがすでに報告されている。本レジメンは、術前にニボルマブと化学療法の併用療法を4サイクル実施するが、有害事象などにより4サイクル実施できない患者も存在する。そこで、CheckMate 77T試験において術前薬物療法が4サイクル未満であった患者の治療成績が検討され、4サイクル未満の患者でも周術期にニボルマブを用いるレジメンが治療成績を向上させることが示された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のMark M. Awad氏が、欧州肺がん学会(ELCC2024)で報告した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験・対象:StageIIA〜IIIB(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版)の切除可能NSCLC患者・試験群:ニボルマブ(360mg、3週ごと)+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→ニボルマブ(480mg、4週ごと)を最長1年(ニボルマブ群、229例)・対照群:プラセボ+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→プラセボを最長1年(プラセボ群、232例)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づく無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]盲検下独立病理判定に基づく病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(MPR)、安全性など 今回報告された主な結果は以下のとおり。・ニボルマブ群の17%(38例)、プラセボ群の12%(27例)が術前薬物療法を3サイクル以下で中止した。このうち、有害事象による中止はそれぞれ55%(21例)、41%(11例)であった。・術前薬物療法のサイクル数別にみたEFS中央値は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群未到達、プラセボ群未到達(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.42~0.79) -4サイクル未満:それぞれ未到達、7.8ヵ月(同:0.51、0.23~1.11)・術前薬物療法のサイクル数と手術の有無別にみたpCR率は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群26.7%、プラセボ群5.4%(群間差:21.3%、95%CI:14.3~28.4) -4サイクル未満:それぞれ18.4%、0%(同:18.4%、2.9~33.4) -4サイクル完了かつ手術あり:それぞれ32.3%、6.5%(同:25.7%、17.4~33.9) -4サイクル未満かつ手術あり:それぞれ35.0%、0%(同:35.0%、2.5~56.7)・術前薬物療法のサイクル数と手術の有無別にみたMPR率は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群38.2%、プラセボ群13.7%(群間差:24.6%、95%CI:16.1~32.7) -4サイクル未満:それぞれ21.1%、0%(同:21.1%、5.1~36.3) -4サイクル完了かつ手術あり:それぞれ46.2%、16.7%(同:29.5%、19.6~38.7) -4サイクル未満かつ手術あり:それぞれ40.0%、0%(同:40.0%、6.9~61.3)・無作為化された全患者および術前薬物療法のサイクル数別にみた死亡または遠隔転移までの期間の中央値は以下のとおり。 -全患者:ニボルマブ群未到達、プラセボ群38.8ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.44~0.85) -4サイクル完了:それぞれ未到達、38.8ヵ月(同:0.61、0.42~0.88) -4サイクル未満:それぞれ未到達、10.9ヵ月(同:0.46、0.22~0.98)・術後薬物療法を受けた患者の割合は、術前薬物療法を4サイクル完了した集団ではニボルマブ群69%(131例)、プラセボ群71%(145例)であり、4サイクル未満の集団ではそれぞれ29%(11例)、26%(7例)であった。術後薬物療法のサイクル数中央値は、いずれの集団においても両群13サイクルであり、多くの患者が術後薬物療法を完了した。 Awad氏は、本結果について「CheckMate 77T試験の探索的解析において、切除可能NSCLC患者に対する周術期のニボルマブ上乗せは、術前薬物療法4サイクル完了の有無にかかわらず有効であった。手術を実施した患者集団において、4サイクル完了した患者集団と4サイクル未満の患者集団のpCR率とMPR率は同様であった」とまとめた。

5.

高齢NSCLC患者へのICI、化学療法の併用を検討すべき患者は?

 PD-L1高発現(TPS≧50%)の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、PD-1またはPD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法、ICIと化学療法の併用療法は標準治療の1つとなっている。しかし、高齢者におけるエビデンスは限られており、ICI単剤療法とICIと化学療法の併用療法のどちらが適切であるかは明らかになっていない。そこで、70歳以上のPD-L1高発現の進行NSCLC患者を対象とした多施設共同後ろ向き研究において、ICI単剤療法とICIと化学療法の併用療法が比較された。その結果、ECOG PS0または非扁平上皮がんの集団では、ICIと化学療法の併用療法が全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善した。本研究結果は、京都府立医科大学の武井 翔太氏らによってFrontiers in Immunology誌2024年2月23日号で報告された。 本研究は、70歳以上でECOG PS0/1のPD-L1高発現の進行NSCLC患者のうち、初回治療でICI単剤療法による治療を受けた患者131例(単剤群)およびICIと化学療法の併用療法による治療を受けた68例(併用群)を対象とした。傾向スコアマッチングにより背景因子を調整し、両群のOSとPFSを比較した。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、単剤群が25.2ヵ月であったのに対し、併用群が42.2ヵ月であったが有意差は認められなかった(p=0.116)。・PFS中央値は、単剤群が10.9ヵ月、併用群が11.8ヵ月であり、有意差は認められなかった(p=0.231)。・単剤群のサブグループ解析において、喫煙歴のない患者はOSが有意に短かった(ハザード比[HR]:0.36、95%信頼区間[CI]:0.16~0.78、p=0.010)。・併用群のサブグループ解析において、ECOG PS1の患者(HR:3.84、95%CI:1.44~10.20、p=0.007)、扁平上皮がんの患者(同:0.17、0.06~0.44、p<0.001)はOSが有意に短かった。・ECOG PS0の集団におけるOS中央値は、単剤群が26.1ヵ月であったのに対し併用群は未到達であり、併用群が有意に長かった(p=0.0031)。同様にPFS中央値は単剤群が6.5ヵ月であったのに対し併用群は21.7ヵ月であり、併用群が有意に長かった(p=0.0436)。・非扁平上皮がんの集団におけるOS中央値は、単剤群が23.8ヵ月であったのに対し併用群は未到達であり、併用群が有意に長かった(p=0.0038)。同様にPFS中央値は単剤群が10.9ヵ月であったのに対し併用群は17.3ヵ月であり、併用群が有意に長かった(p=0.0383)。 本研究結果について、著者らは「PD-L1高発現の高齢NSCLC患者の治療選択時には、ECOG PSと組織型を考慮すべきである」とまとめた。

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デュルバルマブ+化学療法±オラパリブが進行子宮体がんの生存改善(DUO-E)/SGO2024

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の1次治療とICI+PARP阻害薬の維持療法は、進行子宮体がんに対するさらなる抗腫瘍活性を示した。米国婦人科腫瘍学会(SGO2024)で米国・H. Lee MoffittがんセンターのHye Sook Chon氏が発表している。 ICI+化学療法はミスマッチ修復機能欠損(dMMR)子宮体がんに抗腫瘍活性を示している1,2)。ICIへのPARP阻害薬の追加は、さまざまながん種で有効性が期待されており、婦人科腫瘍においても、いくつかの臨床試験でPARP阻害薬とICIの併用療法が研究されている3)。 DUO-E(GOG-3401/ENGOT-EN10)試験は、進行・再発子宮体がんに対するデュルバルマブ・化学療法の併用1次治療へのデュルバルマブ±オラパリブ維持療法追加の有用性を評価する第III相3群無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験である。Chon氏はITT集団およびMMR状況ごとの無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)の初回カットオフの結果(主要評価項目の成熟度61%)を発表した。・対象:未治療の進行StageIII/IV(FIGO2009)または再発子宮体がん・試験群1: 化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル:CP)+デュルバルマブ→デュルバルマブ(CP+D群)・試験群2:CP+デュルバルマブ→デュルバルマブ+オラパリブ(CP+D+O群)・対照群:CP→プラセボ(CP群)・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、ORR、DOR、安全性 主な結果は以下のとおり。[ITT集団]・PFS中央値はCP群9.6ヵ月に対し、CP+D群では10.2ヵ月(対CP群ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.57〜0.89、p=0.003)、CP+D+O群では15.1ヵ月(対CP群HR:0.55、95%CI:0.43〜0.69、p<0.0001)で、CP+D群、CP+D+O群ともに有意に改善した。・ORRはCP群55.1%に対し、CP+D群61.9%(対CP群オッズ比[OR]:1.32、95%CI:0.89〜1.98、p=0.003)、CP+D+O群63.6%(対CP群OR:1.44、95%CI:0.95〜2.18、p=0.0001)で、CP+D群、CP+D+O群ともに有意に改善した。・DOR中央値はCP群7.7ヵ月に対し、CP+D群13.1ヵ月、CP+D+O群21.3ヵ月であった。[dMMR集団]・PFS中央値はCP群7.0ヵ月に対し、CP+D群では未到達(対CP群HR:0.42、95%CI:0.22~0.80)、CP+D+O群では31.8ヵ月(対CP群HR:0.41、95%CI:0.21~0.75)であった。・ORRはCP群40.5%、CP+D群71.4%(対CP群OR:3.68、95%CI:1.51~9.39)、CP+D+O群73.0%(対CP群OR:3.97、95%CI:1.57~10.65)であった。・DOR中央値はCP群10.5ヵ月、CP+D群未到達、CP+D+O群29.9ヵ月であった。[ミスマッチ修復機能正常(pMMR)集団]・PFS中央値はCP群9.7ヵ月に対し、CP+D群では9.9ヵ月(対CP群HR:0.77、95%CI:0.60~0.97)、CP+D+O群では15.0ヵ月(対CP群HR:0.57、95%CI:0.44~0.73)であった。・ORRはCP群59.0%に対し、CP+D群では59.4%(対CP群OR:1.02、95%CI:0.65~1.59)、CP+D+O群では62.1%(対CP群OR:1.10、95%CI:0.69~1.74)であった。・DOR中央値はCP群7.6ヵ月に対し、CP+D群では10.6ヵ月、CP+D+O群では18.7ヵ月であった。[安全性]・CP+D群、CP+D+O群とも忍容性は良好で管理可能であり、治療中止の頻度も低かった。 ITT集団においては、CP+D群、CP+D+O群ともにPFSの改善がみられた。MMRのサブグループを見ると、dMMRについては両群で、pMMRについてはCP+D+O群でPFSの改善傾向がみられた。

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ICIによる心臓irAE発症タイミングと危険因子~国内RWDより/日本循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とは、ご存じのとおり、近年注目されているがん薬物療法で、T細胞活性を増強することによって抗腫瘍効果をもたらし、多くのがん患者の予後を改善させている。しかし、副作用として心筋炎や致死性不整脈など循環器領域の免疫関連有害事象(irAE)の報告も散見される。そこで、稗田 道成氏(九州大学医学部 第一内科 血液・腫瘍・心血管内科)らがLIFE Study1)のデータベースを基に心臓irAEの発生率を調査し、3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会Late Breaking Cohort Studies2において報告した。 稗田氏らは、大規模なリアルワールドデータを利用することで、心臓irAEを起こしやすい患者タイプ、発症タイミング、リスク因子を明らかにするため、LIFE Studyのデータベースを基にICI治療を受けた2,810例の解析を行い、実臨床で比較的頻度が高い心筋炎、心膜炎、死亡率の高い劇症型心筋炎や致死性不整脈の発症状況を調査した。 解析には、国内承認されているICIの6剤(抗PD-1抗体[ニボルマブ、ペムブロリズマブ]、抗PD-L1抗体[アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ]、抗CTLA-4抗体[イピリムマブ]の投与患者が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・LIFE StudyデータベースからICI治療を受けた2,810例を抽出後、心臓irAEと診断された124例を同定した(ICI治療開始から心臓irAE発症までの期間 3ヵ月未満:69例、3ヵ月以上:55例)。・124例の平均年齢±SDは70.2±8.0歳、女性は39例(31.5%)であった。・全心臓irAEの発症率は4.41%で、その発生率は100人年当たり2.02人だった。・心臓irAEの主な病態として、心膜炎(2.17%)、心室頻拍(1.14%)、心筋炎(0.78%)、心室細動(0.32%)が挙げられた。・3ヵ月未満で心臓irAEを発症したのは69例(56%)で、その割合はICI治療患者の2.46%、発生率は100人年当たり10.16人であった。・多重ロジスティック回帰分析の結果、不整脈、慢性心不全、がん転移の有無が心臓irAE発生の独立した危険因子であることが示唆された。また、年齢が高齢になればなるほど心臓irAEのリスクは低下することが判明した。 同氏は「本解析で明らかになった心臓irAEの発生率は既報の海外データと類似する結果2,3)であったが、日本人の大規模なリアルワールドデータを活用することで、心臓irAEの発生ならびにICI治療患者のリスク因子を実証することができた」とコメントした。

8.

日本人胃がんの薬物療法研究の最新情報/日本胃癌学会

 新薬の登場で変化する胃がん薬物療法の国内研究の最新情報が第96回日本胃癌学会総会で報告された。ペムブロリズマブ+化学療法による進行胃がん1次治療の日本人サブセット ペムブロリズマブと化学療法の併用は日本人胃・食道胃接合部がんの1次治療においてもグローバルと同様の結果を示した。 切除不能または転移を有するHER2陰性の胃・食道胃接合部腺がん1次治療で良好な結果を示したペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-859試験における日本人サブセットの結果が示された。日本人サブセットは101例で、ペムブロリズマブ+化学療法群は48例、コントロールとなる化学療法群は53例であった。 追跡期間中央値28.9ヵ月における全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群16.8ヵ月、化学療法群13.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.44〜1.13)、無増悪生存期間(PFS)中央値はペムブロリズマブ+化学療法群6.8ヵ月、化学療法群6.7ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.49〜1.36)であった。奏効率(ORR)はペムブロリズマブ+化学療法群54.2%、化学療法群56.6%、奏効期間中央値はペムブロリズマブ+化学療法群18.4ヵ月、化学療法群5.4ヵ月であった。 Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はペムブロリズマブ+化学療法群の41.7%、化学療法群の39.6%に発現した。Grade3以上の免疫介在性有害事象はペムブロリズマブ+化学療法群の16.7%、化学療法群の3.8%に発現した。日本人MSI-H胃がんに対するニボルマブ+イピリムマブの1次治療 切除不能進行再発のマイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)胃がんの1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブの有効性と安全性を評価するNO LIMIT試験(WJOG13320G/CA209-7w7)の結果が発表された。 NO LIMIT試験は医師主導の第II相試験で、全国75施設935例の切除不能かつ化学療法未治療の胃がんからMSI-Hをスクリーニングし、ニボルマブ+イピリムマブの介入を行った。主要評価項目は盲検下独立中央判定(BICR)によるORRで、推定値を35~65%とした。 MSI-H陽性の割合は5.6%であった。対象は2022年8月29日までに試験に登録された29例。 BICR評価の確定ORRは62.1%(CRは10.3%)で主要評価項目を達成した。病勢コントロール率(DCR)は79.3%であった。Waterfallプロットでは深い奏効が示された。PFS中央値は13.8ヵ月、OS中央値は未達で12ヵ月OS率は80%であった。 Grade3以上のTRAEは41.3%で、安全性プロファイルは既報どおりであった。進行胃がんにおけるラムシルマブのbeyond PD 進行胃がんにおいて血管新生阻害薬の継続療法を評価した第III相RINDBerG試験の結果が発表された。ラムシルマブのbeyond PD療法は主要評価項目であるOSを達成できなかった。 血管新生阻害薬のPD後の継続は、さまざまながんで有効性が報告されている。胃がんでもRAINFALL試験の事後解析で2次治療としてのラムシルマブのPD後投与が良好なOSに関連していると報告されている RINDBerG試験の対象はラムシルマブおよび化学療法抵抗性で既治療の切除不能胃・食道胃接合部腺がん。登録患者はラムシルマブ+イリノテカン(RAM+IRI)群とイリノテカン単剤(IRI)群に割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、ORR、安全性などであった。 OS中央値はRAM+IRI群9.4ヵ月、IRI群8.5ヵ月で、調整HRは0.91、p値は0.37と主要評価項目は未達であった。PFS中央値はRAM+IRI群3.8ヵ月、IRI群2.8ヵ月で、HRは0.72、p値は0.001とRAM+IRI群で有意に優れていた。ORRはRAM+IRI群22.2%、IRI群15.0%であった。DCRはそれぞれ65.6%と52.7%で、オッズ比は1.71、p値は0.02とRAM+IRI群で有意に優れていた。 主な有害事象としては、両群とも好中球減少、白血球減少、食欲不振、倦怠感などが多くみられた。RAM+IRI群の26例、IRI群の32例が毒性中止となっている。

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ソトラシブ、アジア人のKRAS G12C変異陽性肺がんに対する成績(CodeBreaK200)/日本臨床腫瘍学会

 既治療のKRAS G12C変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するソトラシブの第III相CodeBreaK 200試験におけるアジア人サブグループ解析を、九州大学の岡本 勇氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。・対象:免疫チェックポイント阻害薬と化学療法薬の治療歴を有するKRAS G12C変異陽性のNSCLC(過去の脳転移治療例は許容)・試験群:ソトラシブ960mg/日(Soto群:171例)・対照群:ドセタキセル75mg/m2 3週ごと(Dtx群:174例)Dtx群からSoto群へのクロスオーバー投与は許容・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・アジア人集団は37例(日本24例、韓国13例)、Soto群18例、Dtx群19例であった。・アジア人患者の年齢中央値はSoto群65.0歳、Dtx群68.0歳で、ほとんどが現および前喫煙者であった。・BICR評価のPFS中央値はSoto群8.3ヵ月、Dtx群5.6ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.18〜1.15)。・BICR評価のORRはSoto群 27.8%、Dtx群15.8%、病勢制御率はSoto群94.4%、Dtx群57.9%であった。・BICR評価による奏効に至るまでの期間はSoto群1.3ヵ月、Dtx群2.3ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はSoto群の44.4%、Dtx群の62.5%で発現した。・Soto群で頻度が高かったTRAEは下痢、悪心、肝機能障害(AST、ALT、ALP上昇)であった。

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irAE心筋炎の原因の一つに新たな知見が!!【見落とさない!がんの心毒性】第29回

免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)の適応がますます広がっているが、同薬剤による免疫関連有害事象(以下irAE)による心筋炎の発症は臨床上の大きな問題となっている。これまで、irAE心筋炎の発症リスク・重症化リスクとして明らかなものはICI同士の併用療法だけであり、そのほかに女性のほうが男性より発症率が高いことも報告されている1)。ICI併用では単剤と比較して2〜6倍、女性は男性に比べて2〜3倍、心筋炎の発症率が高いとされてきた1)。致死的な合併症であるirAE心筋炎のリスクを把握することは安全ながん治療の実施のために極めて重要であるが、最近、irAE心筋炎の発症機序に関する新しい知見が発表された。2023年10月26日のNature Medicine誌オンライン版に胸腺異常がirAE心筋炎の発症に強く関与していることを明らかにした研究成果が掲載された2)ため、以下に紹介する。Thymus alterations and susceptibility to immune checkpoint inhibitor myocarditis.この論文はパリのソルボンヌ大学を中心としたグループからの発表である。グローバル副作用報告データベース(VigiBase)や臨床試験データなど、複数のデータベースを用いて、胸腺上皮性腫瘍(以下、TET)とほかのがん腫を比較したところ、TETの心筋炎や筋炎発症のオッズ比またはリスク比が15〜38倍であったことを明らかにした。VisiBaseの解析ではほかのがん腫では心筋炎の発症率が1%であったのに対して、TETでは16%と驚異的な発症率であったことも明らかにされた。また、VigiBaseデータより、TETに関連して有意に増加するirAEは重症筋無力症様症候群、筋炎、心筋炎、肝炎であり、ほかのirAEは有意な増加を認めなかった(ただし、肝炎の診断根拠はトランスアミナーゼの上昇のみであり、その背景には肝臓の炎症ではなくむしろ筋炎などがあったことが推察される)。また、ICI心筋炎の国際的レジストリデータから、TETに関連する心筋炎は発症がより早期で、筋炎や重症筋無力症様症候群の合併が多く、致死率も高いことが明らかにされた。さらに興味深いことに、非TET患者でも、ICI心筋炎を発症した患者ではCT画像上の胸腺の形態や大きさが心筋炎を来さなかった患者に比べて有意に異なっており、非TET患者のICI心筋炎の発症にも胸腺異常が関わっていることが示唆された。また、ICI心筋炎患者はICI心筋炎を発症しなかった患者と比べて抗アセチルコリンレセプター(AChR)抗体の陽性率が4〜9倍高く(16〜36% vs. 4%)、抗AChR抗体の存在は心筋炎の発症の独立した危険因子であり、致死性心イベントの増加とも関連していた。胸腺はT細胞が分化成熟するために必須の器官であり、自己抗原を強く認識するT細胞受容体を発現するT細胞を排除する(負の選択)ことにより、自己免疫寛容の成立に寄与する。しかし、一部のT細胞は負の選択をすり抜けて末梢に出現し、心臓に関しては、心筋αミオシンに反応するT細胞が健常人においても末梢に存在しているが3)、主にPD-1/PD-L1経路による末梢性自己免疫寛容が機能しており、自己免疫性心筋炎は滅多に生じることはない。ICI投与によりこの経路がブロックされることにより心筋炎が惹起されると考えられており4)、実際にICI心筋炎動物モデルやICI心筋症患者の末梢血中に心筋ミオシン反応性T細胞が存在することが最近明らかになってきている5,6)。今回の論文から胸腺異常が心筋炎の発症と密接に関わっていることが示されたことにより、ICI心筋炎の発症に胸腺で受けるべきT細胞の正常な分化成熟の阻害が関与していることが示唆され、胸腺をすり抜けたαミオシン反応性T細胞のような心筋反応性T細胞が心筋炎の発症に寄与していることが示唆される。この論文が持つ臨床的意義はとても大きい。抗AChR抗体の存在が有力な発症予測マーカーである可能性があり、そもそも胸腺腫の既往がある人やTETに対するICIの使用はハイリスクであることが明らかになった。また、これまで加齢に伴って生じる胸腺の生物学的および形態学的な変化や成人の免疫系における胸腺の役割に関して、あまり注目がされてこなかった。しかし、この論文においてCTによる胸腺の形態学的特徴がICI心筋炎の予測マーカーとなる可能性が示されたことは、今後がん免疫療法がますます発展していく中で、大きな発見であると考える。1)Yousif LI, et al. Curr Oncol Rep. 2023;25:753–763.2)Fenioux C, et al. Nat Med. 2023;29:3100–3110.3)Lv H, et al. J Clin Invest. 2011;121:1561–1573.4)Tajiri K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2018;48:7–12. 5)Won T, et al. Cell Rep. 2022;41:111611.6)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818–826.講師紹介

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乳がん周術期ICI治療、最新情報を総括/日本臨床腫瘍学会

 近年、いくつかのがん種で免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用した周術期治療が開発されている。乳がん領域では2022年9月、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するペムブロリズマブの術前・術後治療が承認されており、他のICIを用いた試験も実施されている。さらにHR+/HER2-乳がんに対する試験も進行中である。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「ICIで変わる、周術期治療」で、乳がんの周術期ICI治療の試験成績や進行中の試験などの最新情報を、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が紹介した。乳がん周術期ICI治療で現在承認されているのはペムブロリズマブのみ 近年、切除可能TNBCに対する治療は、術前化学療法を実施し、術後に病理学的に残存病変がある場合はカペシタビンとオラパリブ(BRCA変異がある場合)を投与することが標準治療となっている。そのような中、2022年9月、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せし術後にペムブロリズマブを投与する治療が、国際共同第III相KEYNOTE-522試験の結果を基に承認され、現在の標準治療となっている。KEYNOTE-522試験では、病理学的完全奏効(pCR)率、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善し、Stage、PD-L1発現、pCR/non-pCRにかかわらず有効であったことが示されている。一方、non-pCR症例では予後不良であったことから、新たな治療戦略が検討されている(後述)。 KEYNOTE-522試験については、ペムブロリズマブ群における5年EFS割合の改善が9%であることと、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)発現割合(術前薬物療法期)が13.0%ということが釣り合うのか、という議論がしばしば行われるが、尾崎氏は、TNBCの再発後の予後が約2年ということを考慮すると釣り合う、との理解だ。本試験では、ペムブロリズマブ群で薬物療法中止例が1割程度増えるが、手術実施割合の低下は1%未満である。これはirAEをしっかり管理することでほとんどの症例で手術可能であることを示しており、リスクベネフィットバランスを議論するうえで非常に重要なデータと考える、と尾崎氏は述べた。pCR症例の術後ペムブロリズマブは省略可能か?non-pCR症例の術後治療は? KEYNOTE-522試験では、術前化学療法+ペムブロリズマブでpCRが得られた症例は予後良好であることから、術後のペムブロリズマブは省略可能ではないかと考える医師が多い。この疑問を解決するために、現在、pCR症例にペムブロリズマブの投与と経過観察を比較するOptimICE-pCR試験が進行中である。 一方、non-pCR症例に対しては、ペムブロリズマブ単独で十分であると考える医師は少なく、従来使用されてきたカペシタビンやオラパリブ(BRCA変異がある場合)を逐次投与するという施設も増えているという。さらに、より有効な術後治療が検討されており、sacituzumab govitecan+ペムブロリズマブの効果を検討するASCENT-05/OptimICE-RD試験、datopotamab deruxtecan+デュルバルマブの効果を検討するTROPION-Breast03試験が進行中である。 また、ペムブロリズマブによる術前・術後治療後に再発した症例に対しては、西日本がん研究機構(WJOG)においてペムブロリズマブ+パクリタキセル+ベバシズマブの効果を検討するPRELUDE試験が計画中という。予後不良症例に対する新規治療戦略や、他のICIを用いた開発が進行中 TNBCの周術期ICI治療に現在承認されているのはペムブロリズマブのみだが、他の薬剤の試験も実施されている。 アテゾリズマブについては、術前・術後に投与したIMpassion031試験において、pCRの改善は認められたが、EFSは改善傾向がみられたものの統計学的に有意な改善が認められなかった。しかしながら、対照群がKEYNOTE-522試験と同様のGeparDouze/NSABP-B59試験が進行中であり、結果が注目される。 術前・術後の両方ではなく、どちらかのみICIを投与するレジメンも検討されている。術前のみの投与については、アテゾリズマブを用いたneoTRIP試験はnegativeだったが、デュルバルマブを用いたGeparNeuvo試験(第II相試験)において、pCRでは差がなかったもののEFSの改善が認められている。術後のみの投与については、アテゾリズマブを用いたAlexandra/IMpassion030試験ではEFSの改善が認められておらず、ペムブロリズマブを用いたSWOG1418/BR006試験は現在進行中である。尾崎氏は、これまでの成績からは術前・術後とも投与することが重要ではないかと考察している。HR+/HER2-乳がんに対する周術期ICI治療の開発 TNBCだけではなく、現在、他のサブタイプに対しても周術期ICI治療の開発試験が行われている。高リスクのHR+/HER2-乳がんに対して術前化学療法および術後内分泌療法へのICIの上乗せ効果を検討する試験として、ペムブロリズマブのKEYNOTE-756試験とニボルマブのCheckMate 7FL試験が進行中だが、どちらも有意なpCR率の改善が示されており、EFSの結果が期待される。 尾崎氏は、これらの開発状況を踏まえ、「乳がん領域においても、今後さらに周術期ICI治療が増えてくる」と期待を示し、講演を終えた。

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転移を有する腎細胞がん、ctDNAと予後の関連が日本人大規模データで示される(MONSTAR SCREEN)/日本臨床腫瘍学会

 転移を有する腎細胞がん(mRCC)における血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の臨床的有用性が指摘されているが、大規模なデータは不足している。産学連携全国がんゲノムスクリーニングコンソーシアム(SCRUM-Japan)によるMONSTAR-SCREEN1の泌尿器がんグループから、大阪大学の加藤 大悟氏がmRCCにおけるctDNA解析結果を第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 2019年4月~2021年9月、mRCC患者124例を対象に治療前後のctDNA解析(商品名:FoundationOne Liquid CDx)を実施した。34例については組織検体を用いたゲノムプロファイリング(商品名:FoundationOne CDx)も実施された。 主な結果は以下のとおり。・患者特性は年齢中央値が66(21~83)歳、男性が76.0%、淡明細胞型が91.0%、IMDCリスク分類はIntermediateが61.2%、Poorが21.5%であった。・1次治療の症例が74.4%を占め、うち92.7%が免疫チェックポイント阻害薬併用療法を受けていた。・組織検体と血漿検体の検査結果の一致率は16.8%で、18%という過去の報告1)と同様であった。・治療前ctDNAにおけるtumor fraction(TF)中央値は1.15%(四分位範囲:0.62~2.85)であり、治療前TF>1.2%の症例と比較し治療前TF<1.2%の症例で有意に予後が良好であった(全生存期間中央値:28.3ヵ月vs.NR、p=0.0143)。・84.5%で何らかの病的変異が検出され、1症例当たりの変異数中央値は3であった。・治療前ctDNAにおけるBAP1(p=0.0003)およびTP53(p=0.025)の変異は予後不良と有意に関連していた。・治療前後のctDNAの一致率は54.6%で、TP53、VHLなどで治療後に新たに変異が発現あるいは発現頻度が増加した。・病勢進行までの期間について、新規遺伝子変異が認められた症例ではそれ以外の症例と比較して有意に短く(中央値:14.1週vs.44.8週、p=0.046)、新規遺伝子変異数が多いほど短かった(p=0.032)。・治療後の新規遺伝子変異のうち7つについては、FDA承認済の薬剤の対象となりうることが明らかとなった。 加藤氏は、「本データはアジア人mRCC患者における最初の大規模なctDNAを用いた遺伝子プロファイリングデータであり、臨床予後との関連が示された。今後はリファレンスデータとして活用されることが期待され、現在はアジア人とヨーロッパ人の間のctDNAにおける特徴の違いの評価にも取り組んでいる」とした。

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T-DXd中止後の乳がん治療、最も多いレジメンは?(EN-SEMBLE)/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXd中止後に実施した治療レジメンの分布を調査したEN-SEMBLE試験の中間解析の結果、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことを、愛知県がんセンターの能澤 一樹氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 現在、T-DXdの後治療に関しては見解が割れており、間質性肺疾患などの有害事象や病勢進行によってT-DXdを中止した後の最適な治療の決定は喫緊の課題である。そこで、研究グループは、T-DXd中止後に使用される治療レジメンの分布とその有効性・安全性を検討するために多施設コホート研究を行った。今回は、中間解析としてT-DXd中止後の治療レジメンの分布に関するデータが発表された(データカットオフ:2023年5月31日)。 対象は、特定使用成績調査に登録し、切除不能または転移を有するHER2陽性の乳がんに対して2020年5月25日~2021年11月30日にT-DXdの投与を開始したものの、2023年5月31日までに中止し、後治療を開始した患者であった。主要評価項目は、T-DXd中止後の治療レジメンの分布、無増悪生存期間、治療成功期間、後治療に切り替えるまでの期間、全生存期間、全奏効率などで、T-DXdを中止した理由別に評価される予定。 主な結果は以下のとおり。・解析には664例が組み込まれた。65歳未満は62.5%、年齢中央値は60.0歳(範囲 30~89歳)、女性が99.5%であった。・T-DXdの後治療で多かったのは、(1)トラスツズマブ+ペルツズマブ(204例[30.7%])、(2)トラスツズマブ(157例[23.6%])、(3)ラパチニブ(104例[15.7%])を含むレジメンであった。・(1)のトラスツズマブ+ペルツズマブを含むレジメン(30.7%)にさらに併用された治療は、化学療法が23.0%(エリブリン11.6%、ビノレルビン2.7%、ドセタキセル2.0%、パクリタキセル2.0%、カペシタビン1.5%、S-1 1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、レトロゾール0.9%、アナストロゾール0.5%など)で、併用薬なしは4.7%であった。・(2)のトラスツズマブを含むレジメン(23.6%)にさらに併用された治療は、化学療法が16.7%(エリブリン5.4%、ビノレルビン3.8%、S-1 2.0%、ゲムシタビン1.5%、カペシタビン1.4%、パクリタキセル1.2%など)、内分泌療法が2.7%(フルベストラント0.9%、アナストロゾール0.8%、タモキシフェン0.5%など)で、併用薬なしは4.2%であった。・(3)のラパチニブを含むレジメン(15.7%)にさらに併用された薬剤は、カペシタビン13.6%、レトロゾール0.6%、アナストロゾール0.5%などで、併用薬なしは0.3%であった。・エリブリンが投与された130例(19.6%)のうち、併用が多かったのはHER2抗体薬17.3%(トラスツズマブ+ペルツズマブ11.6%、トラスツズマブ5.4%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+レトロゾール0.2%、トラスツズマブ+ペルツズマブ+その他の薬剤0.2%)、ドセタキセル0.2%で、併用薬なしは2.1%であった。・ベバシズマブが投与された53例(8.0%)のうち、パクリタキセルが併用されたのは7.8%、nab-パクリタキセルが併用されたのは0.2%であった。・CDK4/6阻害薬が投与された19例(2.9%)のうち、アベマシクリブとの併用が多かったのはフルベストラント1.2%、アナストロゾール0.5%、エキセメスタン0.2%、レトロゾール0.5%、LH-RHアゴニスト0.2%、パクリタキセル0.2%であった。パルボシクリブとの併用が多かったのはレトロゾール0.5%、フルベストラント0.5%であった。・化学療法の有無別にみると、化学療法を含む後治療は484例(72.9%)であった。化学療法との併用で多かったのは、抗HER2療法53.3%、化学療法のみ9.8%、分子標的薬(抗HER2療法以外)8.1%、抗HER2療法+内分泌療法0.9%、抗HER2療法+その他の薬剤0.3%、抗HER2療法+分子標的薬(抗HER2療法以外)0.3%、免疫チェックポイント阻害薬0.2%であった。・化学療法を含まない後治療は180例(27.1%)であった。抗HER2療法のみが11.1%で最も多かったが、抗HER2療法+内分泌療法6.8%、内分泌療法のみ4.2%、分子標的薬(抗HER2療法以外)+内分泌療法3.0%、分子標的薬(抗HER2療法以外)のみ0.5%、抗HER2療法+分子標的治療(抗HER2療法以外)0.2%などもあった。 これらの結果より、能澤氏は「T-DXd中止後の乳がん治療において、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことが明らかになった。最終的な分析として、後治療のレジメンの有効性と安全性を調査する予定である。EN-SEMBLE試験の結果は、アンメット・メディカル・ニーズであるT-DXdの後治療の最適化に関する知見を提供できると考える」とまとめた。

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胃がん1次治療のzolbetuximab、2試験の日本人サブグループ解析結果(SPOTLIGHT・GLOW)/日本臨床腫瘍学会

 CLDN18.2陽性、HER2陰性で、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がん患者において、CLDN18.2を標的とするモノクローナル抗体zolbetuximabは日本において保険承認申請中であり、近日中の承認が見込まれている。この承認申請の根拠となった第III相SPOTLIGHT試験およびGLOW試験の日本人サブグループの解析結果が、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表された。【SPOTLIGHT試験】 がん研有明病院の山口 研成氏がPresidential Session 4で発表した。・対象:CLDN18.2陽性、HER2陰性、PS0~1、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がんの成人患者・評価項目: [主要評価項目]無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など・試験群:zolbetuximab(800mg/m2、その後600mg/m2を3週ごと)+mFOLFOX6(2週ごと):zolbetuximab群・対照群:プラセボ+mFOLFOX6(2週ごと):プラセボ群 [全体集団]zolbetuximab群(283例)、プラセボ群(282例)・PFS中央値:zolbetuximab群10.61ヵ月、プラセボ群8.67ヵ月(ハザード比[HR]:0.751)・OS中央値:zolbetuximab群18.23ヵ月、プラセボ群15.54ヵ月(HR:0.750)・ORR:zolbetuximab群60.7%、プラセボ群62.1%・有害事象:Grade3以上は、zolbetuximab群で279例中242例(87%)、プラセボ群で278例中216例(78%)。主なGrade3以上の有害事象は悪心、嘔吐、食欲減退で、治療関連死は、zolbetuximab群で5例(2%)、プラセボ群で4例(1%)報告された。 [日本人サブグループ]zolbetuximab群(32例)、プラセボ群(33例)・PFS中央値:zolbetuximab群18.07ヵ月、プラセボ群8.28ヵ月(HR:0.493)・OS中央値:zolbetuximab群23.10ヵ月、プラセボ群17.71ヵ月(HR:0.719)・ORR:zolbetuximab群70.8%、プラセボ群53.8%・有害事象:Grade3以上は、zolbetuximab群で31例中24例(77.4%)、プラセボ群で32例中22例(68.8%)。主な有害事象は嘔吐(zolbetuximab群90.3%対プラセボ群53.1%)、末梢神経障害(74.2%対46.9%)、食欲減退(71.0%対53.1%) 。Grade3以上の有害事象は好中球減少症(54.8%対50.0%)が多かった。【GLOW試験】 国立がん研究センター中央病院の庄司 広和氏がOral Session 3で発表した。・対象:CLDN18.2陽性、HER2陰性、PS0~1、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がんの成人患者・評価項目: [主要評価項目]PFS [副次評価項目]OS、ORR、安全性など ・試験群:zolbetuximab(800mg/m2、その後600mg/m2を3週ごと)+CAPOX(21日ごと):zolbetuximab群・対照群:プラセボ++CAPOX(21日ごと):プラセボ群 [全体集団]zolbetuximab群(254例)、プラセボ群(253例)・PFS中央値:zolbetuximab群8.21ヵ月、プラセボ群6.80ヵ月(HR:0.687)・OS中央値:zolbetuximab群14.39ヵ月、プラセボ群12.16ヵ月(HR:0.771)・ORR:zolbetuximab群53.8%、プラセボ群48.8%・有害事象:zolbetuximab群で最も発現頻度の高かった有害事象は、悪心(68.5%)、嘔吐(66.1%対)、食欲減退(41.3%)だった。 [日本人サブグループ]zolbetuximab群(24例)、プラセボ群(27例)・PFS中央値:zolbetuximab群20.80ヵ月、プラセボ群8.28ヵ月(HR:0.352)・OS中央値:zolbetuximab群24.18ヵ月、プラセボ群14.69ヵ月(HR:0.494)・ORR:zolbetuximab群68.8%、プラセボ群61.9%・有害事象:多かった有害事象は末梢神経障害(zolbetuximab群79.2%対プラセボ群51.9%)、嘔吐(62.5%対55.6%)、食欲減退(54.2%対51.9%) だった。Grade3以上有害事象の発生率は大きな差はなかった(58.3%対63.0%)。 この2試験の結果を受け、Presidential Session 4では韓国・Yonsei Cancer HospitalのSun Young Rha氏がディスカッサントとなり、議論が行われた。Rha氏は「SPOTLIGHT試験とGLOW試験はほぼ同時期に同デザインで行われた試験である。SPOTLIGHT試験は全体集団と日本人集団で大きな傾向は同じだったが、日本人集団はPFSが良好だった。GLOW試験では日本人のPFSが全体集団と比較して非常に長く、両群に差も付いた。OSも全体集団より良好な結果だ。日本人の参加例が少ないためかもしれないが、これらの要因については今後の検討が必要だろう。胃がん1次治療は免疫チェックポイント阻害薬とzolbetuximabの比較など、多くの検討課題が出ている。人種間の比較やリアルワールドデータの検討も重要だ」とした。

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肺がん診療ガイドライン2023押さえておきたい3つのポイント【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第4回

第4回:肺がん診療ガイドライン2023押さえておきたい3つのポイントパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター 呼吸器内科 二宮 貴一朗 氏参考1)日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2023(オンライン版)関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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2030年末までにグローバル売上の3分の1をオンコロジーにする/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年2月19日、都内でオンコロジーメディアラウンドテーブルを開催した。 社長のケネット・ブライスティング氏はオンコロジー領域の展開に関する全体像を説明した。 ギリアドはグローバル戦略として、2030年末までに売り上げの3分の1をオンコロジー領域にするという目標を掲げている。日本法人でも、従来のウイルスや炎症に加え、オンコロジーを新たな注力領域とした。すでに、2023年のAxi-Cel(商品名:イエスカルタ)販売承継、24年には抗Trop-2抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)の乳がんに対する国内製造承認を申請している。25年以降は、肺がんなど固形がんに対するSGの追加適応、急性リンパ性白血病およびメルケル細胞リンパ腫を適応とした同社2剤目となるCAR-T brexucabtagene autoleucel(Brexu-Cel)の上市を計画している。 開発本部長の表 雅之氏は固形がんにおけるSGの展開について説明した。Trop-2は上皮細胞の膜表面タンパクで細胞内シグナル伝達に関与する。さらにTrop-2高発現は、がんの予後不良因子であることが知られる。SGはTrop-2を標的とした抗体とイリノテカンの活性代謝物SN-38の抗体複合体として抗腫瘍活性を発揮する。 SGはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)、HR+/HER2-乳がん、および尿路上皮がん治療薬として海外で承認されている。日本では2024年1月、第III相ASCENT試験1)および国内第II相ASCENT-J02試験2)の結果を基に、2ライン以上の治療歴のある進行TNBCに対する製造承認申請をした。乳がんに対してはさらに、TNBCの1次治療3)、HER2-例の術後補助療法4)、HR+例(3次治療および内分泌療法抵抗例)5)についての治験もグローバルで行われている。 SGの開発は非小細胞肺がん(NSCLC)でも進行中である。今年(2024年)1月にプレス発表された既治療のNSCLCにおける第III相EVOKE-01試験では、主要評価項目(全生存期間[OS])は未達であったものの、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)無効例では3ヵ月以上OSを延長したと発表している6)。NSCLCではさらに、1次治療での試験7)、ICIとの併用8)も進行中である。 そのほか胃・食道胃接合部がん、頭頸部がん、小細胞肺がん、子宮内膜がん、大腸がん、膵がんでSGのグローバル臨床試験が進行している。日本ではTNBC、HR+HER2-乳がん、膀胱がん、NSCLCで治験を実施中である。 ブライスティング氏は今後の開発について、多くの製薬企業やバイオテック企業と連携して開発を推進したいとしている。また、昨今問題となっているドラッグロス問題に関連して、グローバルの試験には日本法人として第III相から参加していきたいと述べた。■参考1)ASCENT試験(Clinical Trials.gov)2)ASCENT‐J02試験(jRCT)3)ASCENT-03試験(Clinical Trials.gov)4)SASCIA試験(Clinical Trials.gov)5)TROPiCS-02試験(Clinical Trials.gov)6)EVOKE-01試験(Clinical Trials.gov)7)EVOKE-02試験(Clinical Trials.gov)8)EVOKE-03試験(Clinical Trials.gov)

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新規抗体薬物複合体SG、既治療のNSCLCに対する第III相試験の結果(EVOKE-01)/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年1月22日、既治療の進行または転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に関するsacituzumab govitecan(SG)の第III相EVOKE-01試験において、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成できなかったと発表した。 EVOKE-01試験はプラチナベース化学療法や免疫チェックポイント阻害薬でPDとなった進行または転移のあるNSCLCを対象に、SGとドセタキセルを比較した試験である。 結果、主要評価項目であるOSは、SG群において良好な傾向が認められたものの、統計学的有意には至らなかった。もっとも、試験集団の60%超を占める、抗PD-1/L1抗体に奏効しなかったサブグループでは、対照群に比べてSG群で3ヵ月以上のOS延長が認められたとしている。 今回のデータは今後開催される医学学会で発表される。また、ギリアドは同試験の結果について規制当局との議論を予定している。 SGのNSCLCに関する臨床開発プログラムは、EVOKE-01以外にペムブロリズマブとの併用による第II相EVOKE-02試験、PD-L1高発現例の1次治療に関する第III相EVOKE-03試験が進行中である。

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腎臓がん患者でのニボルマブの皮下注は点滴静注に劣らず

 治療歴を有する腎細胞がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)の皮下注は、点滴静注と比べて薬物動態と奏効率について非劣性であることが、米ロズウェルパーク総合がんセンターのSaby George氏らが実施した臨床試験で示された。研究グループは、「この結果は、がん患者の時間と医療費の削減につながる可能性がある」と述べている。この研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿器がんシンポジウム(1月25~27日、米サンフランシスコ)で発表された。 George氏は、「ニボルマブの点滴静注は患者にとって大きな負担となる。ニボルマブを皮下注で投与できるのであれば、点滴椅子に1時間座っての治療が所要時間5分の注射で済むため、患者の治療体験は大幅に改善されるはずだ」と話す。 今回の試験では、ロズウェルパークを含む17カ国73カ所のがん治療センターで標準的な治療を受けた進行または転移性淡明細胞型腎細胞がん患者495人を、ヒトヒアルロニダーゼ配合のニボルマブを点滴静注で投与する群(247人、年齢中央値66歳)と皮下注で投与する群(248人、年齢中央値64歳)にランダムに割り付け、転帰を比較した。対象者は1〜2種類の標準的な化学療法をすでに受けていたが、免疫療法薬の使用は初めてだった。 その結果、ニボルマブの初回投与から28日目までの同薬の平均血中濃度と定常状態での同薬の最低血中濃度について、皮下注群は点滴静注群に対して非劣性であることが確認された(平均血中濃度:幾何平均比2.098、90%信頼区間2.001〜2.200、最低血中濃度:同1.774、1.633〜1.927)。また、盲検下独立中央判定委員会(BICR)が評価する客観的奏効率(ORR)は、皮下注群で24.2%、点滴静注群で18.2%であり、無増悪生存期間は前者で7.23カ月、後者で5.65カ月であった。 研究グループは、「ニボルマブは複数のがん種にわたって米食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。そのため、今回、腎細胞がん患者に対して示された同薬の有効性は、他のがん治療にも適用できる可能性を示唆するものだ」との見方を示す。 一方George氏は、「これは患者にとっても医師にとっても画期的な成果だ。患者がニボルマブによる治療を容易に受けられるようになることは間違いない」とロズウェルパークのニュースリリースで述べている。同氏は、「ニボルマブの皮下注が可能になれば、クリニックでのニボルマブ投与が可能になり、患者を輸液センターに送る必要がなくなる。そうなれば、患者に薬剤が投与されるまでの時間も短縮されるだろう」と話す。また、クリニックでの投与が可能になれば、治療へのアクセスの問題も緩和されるため、都市部と地方のがん患者間の格差も縮小する可能性があると指摘している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。 このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。 18項目の推奨事項のうち、「強い推奨」とされたのは7項目あり、その内容は以下の4点にまとめられる。・皮膚上のアクネ菌を抑制する効果がある外用過酸化ベンゾイルの使用。・毛穴の詰まりを改善し、炎症を軽減するためのアダパレン、トレチノイン、タザロテン、トリファロテンなどの外用レチノイドの使用。・細菌と炎症レベル低減のための外用抗菌薬、またはドキシサイクリンなどの経口抗菌薬の使用。・上記の全ての薬剤を必要に応じて併用すること。 また、グッドプラクティスに関する5つの声明は、以下の通りである。・にきびの管理には、それぞれの薬剤の作用機序を考慮した併用療法が推奨される。・経口抗菌薬の使い過ぎは薬剤耐性菌の出現や抗菌薬関連の合併症発生につながり得るため、限定的な使用にとどめるべきである。・経口抗菌薬は、過酸化ベンゾイルなどの他の局所療法薬と併用することで薬剤耐性菌出現のリスクを低減させることができる。・大きいにきびや結節がある患者に対しては、炎症と痛みを早く和らげるためにコルチコステロイドの注射療法が勧められる。・上記の外用薬や経口薬が奏効しない重症患者に対しては、イソトレチノインによる治療を検討する。 最後に、AADが「条件付き」とし、ケースバイケースで医師の判断に委ねた推奨事項として、以下のものがある。・治療薬の候補には、にきびを誘発している可能性があるホルモンを標的とするクラスコテロンクリームもある。また、経口避妊薬やスピロノラクトンなどのホルモン治療薬もホルモンバランスを原因とするにきびの治療に役立つ可能性がある。・サリチル酸クリームは毛穴の詰まりを解消し、皮膚の角質を除去する効果がある。・アゼライン酸クリームは、毛穴の詰まりを解消し、細菌を死滅させ、にきび跡のシミを薄くする効果が期待できる。・経口のミノサイクリンまたはサレサイクリンは、にきびに関連する皮膚の細菌と戦い、炎症を和らげる効果が期待できる。 このほかAADは、ケミカルピーリング、レーザー、光治療器、マイクロニードルなどによるにきび治療を推奨するには、裏付けとなるエビデンスが少な過ぎると述べている。また、食習慣の改善、ビタミンや植物性製品などの代替療法を支持するエビデンスも不足しているとしている。さらに、ブロードバンド光治療、強力パルス光治療、アダパレン0.3%ゲルの使用は非推奨とされた。 Barbieri氏はAADのニュースリリースの中で、「われわれは、にきび患者の抱える懸念に取り組み、最善の治療法を決めるために努力を重ねてきた結果、これまで以上に多くの選択肢を患者に提供することができた。これと同じくらい重要なこととして、皮膚科医は、これらの治療選択肢の全てにアクセスできるようにしておくべきだ」と述べている。

20.

ニボルマブ、切除不能な進行・再発上皮系皮膚悪性腫瘍の効能追加承認/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブは2024年2月9日、小野薬品が、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 今回の承認は、慶應義塾大学病院主導の下、根治切除不能な進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍患者を対象に、ニボルマブの有効性および安全性を検討した医師主導治験(NMSC-PD1試験:KCTR-D014)の結果に基づいたもの。 同試験における中央判定奏効率は19.4%(6/31例、95%信頼区間:7.5〜37.5)を示し、主要評価項目を達成した。同試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、既報と同様であった。

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